87.砂嵐


ドラゴンクエストX(ドラクエ10)ランキング

オアシスの村の人々は、日蝕をこの山の麓で迎えた。その時の空は暗闇に覆われこの世の終わりかと恐怖もしたが、村人全員が揃い、用心棒となる傭兵も二人居て、大きな混乱もなく再び太陽を拝む事が出来た。光輪から徐々に現れる太陽の光を、皆が畏怖の念を持ち拝んだ。

f:id:solz29dq10:20230213212944j:image

それから丸一日。簡易なテントが幾つか張られ、子供たちは束の間の旅を楽しむ逞しさ。青年達の中には、ここまで来たついでだからと朝早くから岩塩を取りに行く強者もいた。年寄りや病人も、数日前より調子の良い程で、長老はひとまず胸を撫で下ろす。

そんな中、ナージフは周囲の警戒を怠ってはいなかった。村人に混じって怠けようとするイブンを小突きながら、サマリが迎えに来るのを今か今かと待っていた。

(早ければ今日中にと思っていたが、流石に無理か。明日一日待ってみるかな)

オアシスの村で何が起こるのか皆目検討もつかないナージフだ。サマリは危ない事は無いと言ったが、もし明日一日待っても来なければ、自分一人でもサマリを探しに村へ戻る心づもりをしていた。

陽も傾き、焚き火の数を増やそうと馬車の荷台に歩いていくと、先程まで大人しくしていたラクダ達が怯えた声を上げ落ち着かない。

「どうした?ん?」

周りに置いてある家畜の檻には、日除けと目隠しの為の布がかけてあるが、その中も騒がしい。

動物の方が感の良い事もある。訝しげにオアシスの村の方角を眺め、ナージフは更に眉を顰めた。

(あれは・・・竜巻?にしては小さいな)

落ち着かな気に足踏みをして、岩に繋いだ手綱を振りほどこうとするラクダを宥めながら、ナージフは目を凝らした。

小さな砂嵐が起こっている。それもごく近くに。

「イブン!!イブン!!」

ナージフはラクダを一匹引き寄せると、イブンを呼びつけた。

「様子がおかしい。俺は偵察してくるから、お前はここの守りを怠るな?あまり騒ぎにならないように」

イブンが心得たと返事をすると同時に、ナージフはラクダに跨り、ムチを打ち砂嵐の方角へ向かった。少し走らせただけで、ナージフは砂嵐の元がなんなのかすぐに理解した。

(サマリ・・あいつっ)

これ以上進むのを嫌がるラクダから降りると、ナージフは近くの岩と岩の隙間に杭を打ってラクダの手綱を繋ぐ。そして自分一人走り出した。

今までにも何度か見た事のあるつむじ風。それはサマリが溜め込んだ気持ちが抑えきれなくなった時に無意識に起こる。つむじ風は周りにいる全ての人やモノをいつも傷付けた。厄介なのは、それを起こした当人にはその後の記憶が無いこと。力を制御する方法を教える者がいなかった事だった。

ナージフが村に居る時は、サマリからその兆候を感じると、いつも手合わせを始めて気を逸らさせていた。しかしナージフはオアシスの村の住人ではないので、いつも付き添っては居られない。時々知らない間に事は起こっているのだろう。村人たちからの腫れ物に触るような居心地悪い優しさを、サマリは感じ取っていたはずだ。

(今回はデカイな。過去一じゃねぇか?やばいぞ)

そして近づくにつれ、つむじ風の向こう側に、見た事もない緑の魔物が得物を振り上げているのを見てとった。

f:id:solz29dq10:20230213212837j:image

                                続く


ドラゴンクエストX(ドラクエ10)ランキング