風の上位精霊リヤハは、昼寝をしていた。
そろそろ寝飽きてきたので、起きようかどうしようか悩んでいた所、自分を祀る神殿の方角で、久しぶりに自分の眷属達の動く気配がした。
「ほう?珍しい事もあるものだな」
その気配はすぐに収まったが、何故だか非常に興味を惹かれ、長いまつ毛に覆われた瞳を気怠げに開いた。
最近つまらない事ばかりだったが、もうだいぶ寝た気もするし、そろそろ起きよう。
リヤハは身体を起こすと、ついとその気になる方角を見つめた。
ゆったりとした翠色の衣に身を包み、薄い土色の髪の毛が精悍な容姿を柔らかく見せる。
彼にとって、歩く事と空を翔ぶ事は同義だ。
形ばかりのドア兼用の窓から空へ飛び立つと、両腕を組んで宙にとどまり、もう一度砂漠の果てを見つめる。
彼が意識を集中すると、身体はそこにあるまま、視界だけがどんどんと風の速さで進んでいき、オアシスの村の遺跡へ到達するとピタッと焦点が合った。
「ふむ・・。気に食わんな」
自分が寝ている間に、神殿が倒壊している。
何やらオアシスの周りがごちゃごちゃとして、人や、見たことのない建物が増えている。
自分を讃える石碑や柱が移動され、一部人間の家に使われているばかりか、誰も神殿の手入れをした様子もない。
いつのまにこんな風になってしまったのか。
自分が昼寝を決め込んだのが、人間で言うところの何百年前なのか、リヤハには興味の範疇外だ。
リヤハはそんな時の流れの事などお構いなしに、自分が軽んじられた事に対して腹を立てた。
「アイツは、いったい今迄、何をしていたんだ?」
憤った様子でそう呟くと、視界を巡らせて一羽のロック鳥の姿を探した。
リヤハは昼寝をする前に、この自分の神殿の管理を一羽の雌のロック鳥に託したのだ。
彼女がこの神殿の上の岩壁に巣を作ることを許す代わりに、 人間どもが神殿の奥深くまでは入らないように。
(入らないようにしろとは言ったが、放置しろとは言ってない!!)
リヤハは勝手な自分なりの解釈を思い出すと、段々怒りが増幅していくのを感じた。
ある程度の精霊への畏れが必要だということを、今こそヒトは思いしるべきだ。
オアシスの村の背後にそびえる岩壁は、一つの山といっても差し支え無いほどの厚みがある。
この山上に到達した者はまだ誰もいない。
上空から覗くと小さな穴があり、その奥の横穴に、大人が優に3人は寝られる大きさの鳥の巣があった。
そこが、ロック鳥の巣だった。
その時、巣は空っぽで、あまり使われている様子もない。
「なんだ・・・。留守を守らせるつもりがあいつ、何処へ消えた?」
リヤハは整った眉をあげて、怪訝な顔をした。
続く
🌹6日振りとなった小説の投稿。
毎日、結構書くことってあるものですね。
ありがたいことです(^ ^)
小説要らないとか、言わないでね(笑)
本当はこっちがメインというかキッカケなの。