サマリはこの時点で、ナージフと違って全く息が上がっていない。
その細い身体の何処にそんな体力があるのか。
クルクルと地面を跳ね、ナージフの刃を交わす。
しかもサマリはこちらから攻撃を仕掛けようとはしなかった。
防戦一方。
彼女は、遊んでいるのだ。
紫の瞳が、生き生きと輝いている。
今、二人が真剣を持っていることは理解している。
けれど、倒そうとか、勝とうとか、そんな気持ちが全くない。
ナージフが疲れ果て、倒れるのを待っている。
そんな戦法なのだろうか。
「サマリ、もう少し真面目にやれ!」
ナージフは半月刀の束を握り直し、愛弟子を睨みつけた。
サマリは、いつになく怖い表情のナージフを見て、緩んだ頬を引き締め、次の攻撃に備えた。
ナージフは、護身用にサマリに剣を覚えて欲しかった。
これから美しく成長し、一人で生活していく彼女が、自分の身を守れるように。
それなのに、いつも全く本気を出してこない事に、ナージフは苛立った。
サマリに怪我をさせたくない。
それもまた、ナージフの腕を鈍らせる。
技術的にはまだ半分も本気を出してはいない。けれど、体力的にはそろそろ限界だ。明日には旅立つ我が身が、疲れ果ててはいけないからだ。
そういう意味でこの試合は、普通に魔物を倒す事よりも難しかった。
(くそっ!人の気も知らないで!)
半ば強引に距離を詰め、ナージフの刃が懐まで届きそうになる。
お互いが技量を理解してこそ、サマリが自分の刃を避けると信じているからこその攻撃だった。
サマリはそれに応えて、攻撃を短剣で受けると、反動で背転しながらかなりの距離を取った。
ズザザザッと、着地点の砂を巻き上げて、サマリは体勢を崩すまいと踏ん張る。
すぐ背後には野次馬の村人が迫っていた。
いつもと違った様子のナージフに、村人達は敏感に反応した。ざわっとして村人達が危険を感じ、その場を離れようと小さな混乱が起こった。
続く
🌹バトルフォトが難しすぎて断念。
頭の中には沢山映像があるのになぁ?