隊商のオアシス滞在期間、サマリは毎日のようにナージフから武器の扱い方を習うようになる。
最初は子供のお遊びだった。
サマリは相手をして貰える事がただ嬉しくて、素直に言う事をきき、鍛錬し、期待に応えた。
砂漠の砂が水を吸うように、ナージフの伝える事を理解していった。
隊商の都合に合わせ、別れがすぐにやって来ても、また次の折り返しに彼らはオアシスの村を訪れる。
そのうちナージフは、オアシス経由の仕事をわざと選んで受ける様になっていた。
仲間は、皆そのことを知っていて、サマリをナージフの娘だと言ってからかった。
しばらくして、ナージフはサマリが言葉少なな理由に思い当たった。
いつも1人でいて、傍のインコに一方的に話すだけで、普段村人との会話が少ないことが原因だった。
決して村人から嫌われている訳でもない。
それなのに孤高を保ち、誰も近寄らない遺跡の奥に寝床を持ち、インコに守られるように自由気ままに生きる少女。
その世間ズレした境遇を、大きな街出身のナージフは哀れに思った。
ナージフは、仲間と共にサマリと極力会話をするように努めた。
暇つぶしというには、あまりにも長期にわたるその行為。
何故そんな事をしようと思ったのか、当の本人のナージフにもわからない。
今にして思えば、短剣を渡したあの時から、ナージフはサマリに不思議な術をかけられていたのではないだろうか?
(そんな馬鹿なことがあるか)
自分の腕だけを頼りに生きてきた彼は、そんなに信仰心が強くない。
サマリは何処の街にでもいるような、ただの孤児だ。
そのはずだ。
ちょっと首を傾げる事はあるけれど。
ちょっと。度々。頻繁に?
ナージフの疑問は常に絶えない。それなのに、どうしてこうも世話を焼いているのだろう。
(ナージル!ねぇ、ナージル!)
間違って覚えた彼の名前を、頑なに直そうとしないサマリの白い顔を思い浮かべる。
まだまだ子供だと思っていたサマリが、会う度に成長していくのを半ば苦々しく思った。
続く
🌹9月18日(土)プクコレ
19日(日)蝶の舞うギルド