3.遺跡の近くで

砂漠を越えるのは、この時代並大抵の事では無かった。

昼には太陽という名の敵、夜には魔物という名の敵。

移動する時間は、太陽の傾いた夕方と、早朝空が白み始めた頃の時間に限られていた。

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勿論、体力のある者が単独行動をするなら日中でも移動できただろうが、商人達は多数の商材をラクダの背に積んでいた。

遠い街から、次の街へ、売り上げの金目のものも肌に身につけている。

岩砂漠には盗賊の出る地域があり、残念な事にそこを避けて通る事は、移動日数の増加に繋がる。

移動日数が増えれば、売り上げが減る。

売り上げが減るくらいなら、傭兵を雇う。

貧乏な商隊は、傭兵を多くは雇えない。

それならば、目的地の同じ複数の商隊で組んで行動すれば、多くの傭兵と共に移動出来て安全が確保される。

そういう仕組みになっていた。

 

 

 

ナージフは、今回3つの商隊が組んだキャラバンで、隊長のような役割を担っていた。

腕は申し分ない。

その上に穏やかな人柄は、傭兵達の間でも兄貴と慕われていた。

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毎回同じ地点の道無き道を、行ったり来たりの繰り返し。

そんな生活を、もう何年も続けてきたのだった。

 

話は少し遡る。

 

 

常に死と隣り合わせの生活の中、ナージフはサマリと出会った。

初めて会ったのは何年前だろうか。

サマリはまだ幼くて、年齢の割にあまり言葉を知らない少女だった。

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暇にしていたオアシスの村の滞在期間。

 

なまってしまいそうな身体を鍛える為に、何処か人の邪魔にならない場所を探して、ナージフは崩れた遺跡のそばの少しひらけた場所へやってきた。

 

愛用の半月刀を一閃し、素振りをしばらく続けていると、視界に黄色いものがチラつく気がして、ナージフは手を止め、周囲を伺った。

 

 

殺気は感じられない。

 

朽ちた遺跡の柱の陰から、黄色いインコと共に此方を見つめるキラキラした瞳に気がつくのに、そう時間はかからなかった。

 

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         続く

 

🌹最近、ドレアを2つ作ったのですが、どれもイベント関連で公開出来ずにムズムズしています(笑)