太陽が沈み始めたオアシスの村の広場。
そこでは、昨夜到着した隊商が、思い思いに店を広げていた。
村人はお祭り騒ぎで店の品物を物色している。その喧騒の中、軽やかな空気を身に纏い、小柄な少女が高い塀の上から飛び降りてきた。
白い肌、薄い金の髪。
その姿は浅黒い肌の多い村人の誰とも似ておらず、異彩を放っていた。
粗末な服を着ていたが、汚れはなくこざっぱりとしている。
不思議な意匠の金の腕輪が、服よりも豪華で目を引いた。
金の髪は頭の上で一つにまとめられていたが、緩いウェーブを描いて無造作に顔の周りで揺れている。
大きな瞳の色は明るい紫色。
「ナージル!ナージルーーー!!」
着地する姿も軽く、砂埃が少し起こった程度。
少女はそのまま真っ直ぐに、屋台には目もくれず、1人の傭兵の元へと飛び込んだ。
「ナージル!会いたかった!」
「サマリ!何度言ったら覚えるんだ?
俺の名前は『ナージフ』!」
感動の再会は、お小言から始まった。
そんなことはお構いなしに、サマリはナージフの胸に飛び込んだ。
ナージフの背丈は、サマリと同じくらい。
鍛えた筋肉と、おどけた優しい笑顔が印象的だ。
かなりの勢いだったはずだが、ナージフが普段鍛えている為か、足元は微動だにしなかった。
少女は嬉しくて仕方がない様子で、傭兵の側ではしゃいでいる。
「ナージルが来るなら昨日からこっちに来ておけば良かった!」
笑って座り込んだナージフの隣で早速くつろぐサマリに、近くにいた傭兵達が集まってきた。
これも恒例なのだろう。
傭兵達が口々に冷やかす。
「おぅおぅ!隊長いいねぇ!可愛い娘のお出迎えだな」
「うるせぇ!こう見えても俺は独身だ!」
「久しぶりだな、サマリちゃん!また綺麗になったんじゃねぇか?」
「お前、間違っても手ぇ出すなよ?命が惜しくなかったらな?」
「わかってるさ。俺たちは、な?」
いつもの調子の気の良い彼ら。
サマリはニコニコとその様子を見ている。
仲間の傭兵達も、それこそ自分の子供の成長を見守るような優しい目で、サマリに話しかけた。
彼女の人懐こさと、天真爛漫な様子は、疲れた彼らのいっときの清涼剤のようだ。
ひとしきり騒いだ後、腹ごしらえの為にナージフ達はキャラバンのすぐ側の屋台に陣取った。
「ねぇねぇ、ナージル!今回は何日くらい逗留するの?また手合わせして欲しい!」
久しぶりに剣の相手をして欲しい、とサマリは目を輝かせてナージフにお願いを始めた。
「だから俺の名前はな・・・」
何度となく繰り返される他愛無いやり取り。
それはサマリにとって宝物のような時間であった。
「ナージフ、お前の弟子は熱心だなぁ?」
「お、おぅよ」
サマリの興味は、女の子らしい服や装飾よりも手合わせの方にあるようだ。
そんなサマリを見て、傭兵達は顔を見合わせ苦笑いをした。
続く
🌹俳優さん確保に一苦労。
ゆーだぃ君のサブのジョージさんにお願いしました。ありがとう😊