それは、神や精霊や悪魔が、まだ人と近かった時代。
加護も呪詛も、大きく人々の生活に影響し、人生を翻弄した、そんな時代。
海と河によって発達した文明は、人々に神殿を建てさせ、街を造らせた。
魔物から身を守るように街は外壁に囲まれ、冒険者はその壁をくぐって旅立つ。
商売が発展し,未知の物を求めて隊商が組まれる。
いくつもの邂逅、いくつもの出会い、それは人間を拒絶する広大な岩砂漠に、見えない道を作っていった。
一歩街の外に出れば、そこは朝晩で50度近く気温差のある過酷な岩砂漠の世界。
毒を持つ虫や、魔物が息づく場所だ。
冒険者や隊商は、次の目的地へ辿り着く前に必ず、目指すところがある。
それが、小さなオアシスの村だった。
いつのまにかその存在を知られ、大事な旅人達の中継地点となったその場所には、小さいけれど、渾々と湧き出るオアシスがあった。
オアシスを取り囲むように緑が生い茂り、それをまた囲むように家が建っている。
外壁は簡易なものしか無かったが、背後は巨大な岩壁になっていて、強すぎる太陽の日差しと余計な来訪者の目を上手く遮っていた。
村の長老は世話好きな人物で、村人から尊敬を受けていた。
隊商や冒険者を快く受け入れており、宿屋もあり、珍しい物品を取り扱う店もあり、貧しいながらも活気のある村だった。
その日の夕方。ようやく太陽が傾き、村人は日々の生活に一段落。
村の広場には、昨夜到着した隊商が店を広げていた。
数年前から何度も訪れている顔見知りの隊商で、人々は全面的な好意を持って迎え入れていて、皆表情は明るい。
今回はどんな珍しいものがあるだろうか?
最近の街の流行りは何だろうか?
以前頼んでいた品物は仕入れてくれただろうか?
商人達は長旅の疲れなど知らないかのように笑顔を振りまいて商品の口上を並べる。
期待に満ちた村人は、大人も子供も、簡易な木の屋台を覗き込んだ。
その一歩離れた所には、軽く武装した男達が数人。
隊商に雇われて、共に旅をしてきた傭兵達だ。
砂漠越えの最中は緊張の連続だったが、幸い今回は大きな魔物にも襲われずにオアシスの村まで辿り着く事が出来た。
この村は幾度となく訪れている慣れた場所の為、くつろいだ表情でたむろしている。
せいぜい、出来心のスリの子供を捕まえるくらいがこの村での彼らの仕事となる筈だ。
その傭兵達の元へ、隣の珍しい屋台には目もくれず、軽やかな身のこなしで飛び込む少女の姿があった。
続く
🌹ようやく主人公の姿が登場。
ちゃんと活躍させてあげたいですね。
ドレア紹介やプレイベ感想などを挟みつつ、無理ない範囲で書いていきたいと思います。