【猫探し】scene4🐈‍⬛ピノ魔界探偵社より - ソルジーのティア＆エオルゼア冒険奇譚

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エルガーが探偵社に戻ると、机の上に『王立美術館に来て欲しい』という書き置きがあった。 f:id:solz29dq10:20220326144628j:image

そのままの足で美術館に到着すると、すぐに美術館職員と話をしているピノを見つけた。
「よう、ピノ！進展はあったのか？」
その問いを待ってましたとばかりに、ピノは演技めいた口調で答える。
「今しがた、真実のパズルはほぼ埋まったよ。あとは、エルが持つピースを嵌めるだけさ」
館内には数名しか人がおらず、ガランとしていた。美術館職員も暇そうで、２人の話を遮る事はなかった。
エルガーは調査結果をピノに伝えた。
広い美術館は、廊下もギャラリーとなっており、立派な額装の絵画が多く飾られていた。途中休憩をしたり、ゆっくり絵画を鑑賞出来るように長椅子が配置されている。ピノは美術館職員が立ち去るのを見届けると、エルガーを相手に推理をはじめた。
　　　　　　
「まず現状をまとめよう。依頼人ハリソン宅に飾られていた絵画」
ピノはエルガーの後ろを指差す。
「『夜と猫』はおそらく、あの絵画もしくは贋作とすり替えられた」
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言われるままにピノが指差すほうに振り向くと、反対側の壁の端にはハリソン邸で見たものと全く同じ絵画が飾られている。
エルガーは思わず大きな声を出した。
「なんで！この美術館に猫が逃げ出した方の『夜と猫』が！？」
よくよく見ると、美術館の絵には、「コントレート作『夜』」というタイトルが添えられていた。
驚くエルガーをよそに、ピノは推理を続ける。
「ネコと絵画のすり替えは、エルが調査した通り窃盗団が実行した」
ピノはにやける。
「そこがこの一連の事件の面白い所なんだよ」
そう言いながら、ピノは小脇に抱えていた本を取り出した。
「まずはこの本のここを読んでみてくれ」
ピノは栞を挟んであったページを開くと、エルガーに差し出す。
『この絵画は思い出深い・・・』
その場でざっと目を通すと、エルガーは興味津々で質問を始めた。
「これは、絵画の作者コントレートの制作日記か！何処でこれを？」
ピノは表紙を見せながら語る。
「なぁに、コントレートの制作日記がみつかって、それをまとめた書籍が親族の手で自費出版されていたのだよ。出版されたのは、かれこれ１年も前になる」
自宅に絵画を飾ろうと色々勉強の為に購入した本が早速役に立った訳だ、と得意げなピノ。その顔を、散らかった探偵事務所の光景を思い出したエルガーがうんざり眺めた。

「コレを読み解くに」
長椅子の向こうの絵画に視線を投げかけ、ピノは話続ける。
「絵画が質素な木枠に収まっているのは、母の部屋の窓枠を模しているから。そしてハリソン家が所有していた『夜と猫』には、猫が逃げ出す前は月が描かれていなかった」
エルガーはハリソン邸での事を思い出し、頷く。
「作者の母の部屋の窓が一つだけなら、片方という言葉は使わない」
エルガーが慌てて口を挟む。
「ちょっと待て！窓が二つあるってのは、お前の推測だろ？」
すると、ピノが想定済みの質問とばかりに、にっこりと微笑んだ。
「今此処に来る前に、コントレートの生家に行って、部屋に窓が二つあるのを確認して来たよ。彼は、生涯を生家で過ごしたらしい。思い入れの強い家だったのだろう」
そして、手に持った本の表紙を軽く撫でた。
「この制作日記には、自身が制作したすべての作品について記述してある、と書いてある。しかし、『夜』というタイトルの作品は記載が無いんだ」
ピノは興奮した様子で歩き出し、粗末な額縁の絵画の前で目を輝かせた。それを追うようにエルガーもまた『夜』の前に立つ。

「つまり『夜と猫』は、コントレートの母の部屋にある二つの窓をモデルに、夜と月が描かれた『夜』と、夜と猫が描かれた『猫』の二つで一つの『夜と猫』という作品なのだよ！」

広い廊下を通りかかった数名の美術館の客が、何事だろうと足を止め、ピノ達の様子を遠巻きに伺った。
「そして最後に。この作品の制作日誌は、自費出版という性質上、発行部数も少ない。目に止める事も、この本から真実を紐解ける人も、極めて少ないだろう」

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ピノは身体を反転し、『夜』が一番良く見える席に静かに座っていた身なりの良い白髪の老人に向かって深々とエテーネ風のお辞儀をした。
「ここまでの推理、いかがでしょう？」
その問いに、老人はゆっくりと立ち上がり、ピノに視線を向けると開口一番にこう答えた。
「素晴らしい推理だが・・・、美術館ではお静かに」