オアシスの村では、椰子の葉や幹を乾燥させて、簡易で風通りの良い家を作る事が多い。
その中で、唯一ふんだんに石を使用した家がある。
それが、長老の家だ。
どうやらだいぶ昔、何代目か前の長老が、村の外れにある遺跡の石を大胆に失敬して作ったらしいが、それは今ここでは言うまい。
長老の生活する棟と、実質的な所で村の調整役を担う村長夫婦の生活する棟、それに集会場のような大広間も加わり、他とは破格の規模を誇る。
村と表現する様に、この広い砂漠の中にポツンとある小さなオアシスは、魔物にとっても格好の的だった。不定期に襲われ家畜が被害を受ける。雨季の突発的な洪水、乾季の砂嵐、様々な災害に苦しめられ、ここでの生活は厳しい。
それでも、旅の要所である地形を利用して、今の長老を含めた歴代の村長達は、村の治安と生活のレベル向上に努力してきた。
小さな村のあらゆる問題は、ここへくればだいたい済むようになっていて、人の出入りが途切れる事がない。
サマリが長老の家の入り口に辿り着き来訪を告げると、孫娘のラウダがにこやかに出迎えてくれた。
村の同世代の女の子の中で、一番の仲良し。
それが、ラウダだ。
「サマリちゃん!よく来たわね、入って、入って!お爺ちゃんが毎日毎日、首を長くして待ってたわよ」
遠慮がちのサマリの手を取り、ラウダはぐいぐいと部屋の奥へ足を進めた。
サマリは半分引きずられるように後をついて行く。
「ごめんなさい、隊商が来てたから・・」
「それは、そうよね。私も新しい布地を買ってもらったわ!今回も、楽しかったわね」
ラウダの言う『楽しい』と、サマリの感じる『楽しい』はいつもかなり隔たりがあるのだが、何故だか二人はとてもウマが合った。
恐らく、同い年。もしかしたら、サマリの方が上かもしれないが、育ちの違いのせいかラウダの方がませている。
ラウダの我が儘にいつも振り回されながら、サマリは彼女といると楽しい。
彼女は表裏がなく、気持ちが良い。幼馴染のサマリを微塵も怖がらない。
それは、ラウダにとっても同じ。サマリはいつもニコニコとして、どんな我が儘にも付き合ってくれる。
大人は、サマリを大事にしつつも腫れ物のように扱うが、自分となんら変わらない、ちょっと肌の色が白いだけの女の子だと思っている。
ラウダは、今回も親にキャラバンの商品を沢山買ってもらったらしい。
(そう言えば、今回はあまり商品を見なかったわ)
と、サマリはぼんやり考えた。
毎回ナージフとその仲間達から冒険の話を聞く事に夢中で、モノにはあまり執着の無いサマリであった。
「お爺ちゃん、サマリちゃんが来たよー!」
声を掛けるより前に、奥の部屋の扉を勢いよく開けて、ラウダはズンズンと中に入って行く。
部屋の中央で、寛いだ様子で座っていた初老の男がゆっくりと振り向いた。
ラウダの祖父であり、このオアシスの村の長老。息子夫婦に早く村長を譲った為に、儀礼的に長老と呼ばれているが、まだまだ現役。
白髪の為に年寄りに見えがちだが、眼光鋭く、立派な体躯をしていた。
思慮深く、でもちょっと悪戯好きな長老は、サマリを、こう呼ぶ。
「おぉ、鳥の子、よう来たな、待っておったぞ」
続く
🌹物語を語る上で欠かせない重要人物の長老役を、大胆にも、セブンのフロアホスト、ギャス様にお願いしました!
私は普段、あのドレアから神と呼んでいます。
10月16日は、セブン開催日。
私も並んでいると思いますが、どうぞギャス様に会いに来てください!
そのまま本店に並んで、ホストとの会話を楽しんだり(ギャス様はフロアなので指名出来ません)、コラボ企画のテッカ団のイベントへ足を運んでみてくださいね。
今から私も期待に胸膨らませています。