68.17年前のあの日


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長老は、時が来たら話そうと思っていたのだと苦しそうな表情で前置きをした。

         🌹

それは17年前のシャウワールの月。オアシスの村長として毎日忙しく働く自分も、息子が一人前になってだいぶ楽になってきていた。先日は、四人めにして初めての女の子の孫が生まれ、幸せである。この日も、少し抜け出して、村の外れの神殿跡へこっそり息抜きに来ていた。

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幼い頃から密かに勉強していた古代文字を読み解きたくて、新たな何かを発見したくて、時折通っている場所だ。

ところがその日は胸騒ぎがして、自分はいつもより警戒しながら神殿の周りを見渡した。

そこで、自分は大きな白いロック鳥を見た。ロック鳥は風の精霊の眷族で、神聖な鳥であるとされてきた。しかし、自分の目の前にいる既知の白いロック鳥は、自分の認識で言えば、時折村に姿を現しては村の家畜を襲う天敵だった。神殿の近くに巣を作っている事は明白だったが、未だ誰もその場所を見たものはいなかった。

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ふとロック鳥の足元を見ると、金髪で白い肌に美しい装束を纏った男女が倒れていた。初めは、二人がこのロック鳥に襲われたのかと思ったが、そうではないらしい。近寄るのが怖くて物陰から覗いていると、もう既に男性の方はコトきれているようだった。女性の方も瀕死で、目が既に見えていないのだろう。ぐったりと男に寄り添い、右手をロック鳥に弱々しく差し出して何かを訴えている。それを、ロック鳥が小首を傾げながらじっと見つめているのだ。女性が左手に抱いているのは、ようやく立つか立たないかというくらいの赤ん坊だった。母親に抱かれたまま、不思議そうにロック鳥をみている。まだ恐ろしさがわからないのか、これまた親譲りの金の髪を煌めかせながら、ロック鳥にキャッキャと笑いかけた。この赤ん坊のほうは元気そうだったのが唯一の救いだった。

「サマリを・・お願い・・サマリ・・」

母親であろう女性の差し出す右手はパタリと砂地に落ちた。

自分は一部始終を見ていたけれど、ロック鳥が怖くてそこに近づく事が出来なかった。じーっと赤ん坊を眺めていたロック鳥が、ゆっくりその大きな顔を近づけると、サマリと呼ばれた子は両手を掲げて、ロック鳥の艶やかな羽毛に覆われた顔を撫でた。すると、ロック鳥はヒョイと赤ん坊の服を嘴に咥え、あっという間に飛び立ってしまったのだ。

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「ま、待ってくれ!その子をどうするつもりだ!」

ようやく勇気を振り絞って飛び出したが時既に遅し。白いロック鳥は追いかける間もなく姿を消し、自分は倒れた二人の足元で空を見上げるしか出来なかった。

倒れた男女は高貴そうな身なりをしていたが、身元のわかるものはなく、女性の方も息絶えて何も聞き出すことは出来なかった。

赤ん坊を探すのは今は諦め、まずはこの二人を埋葬する事を決めた。一度村に戻って息子を呼ぶと、この男女を村の外れの共同墓地に密かに運んだ。その時に、男性の両腕に立派な金の腕輪がはまっているのを見つけ、外した。決してやましい気持ちからではなく、今後何かの証拠になるかと思っての事だった。それを見た息子は、女性からも装飾品を外して、父親の掌にそっと乗せた。

「子供がいたのでしょう?見つけに行かないと」

既に四人の子供の父親となっている息子は、同じ年頃の子を持つ親として、この亡くなった二人に思うところがあったのかもしれなかった。

         🌹

「すまない、サマリ。私が直接ご両親からお前を頼まれたのではなかったのだよ」

長老は、そこまで話し終えるとこうべを垂れた。ロック鳥の前に飛び出す勇気のなかった自分を恥じているのだ。

「でも私は、こうして生きてるわよ?」

サマリは、長老を慰めるように笑顔で答えた。

「そう。話にはまだ続きがあるのだよ」

 

          続く

      🌹珍しくおまけ🌹

先日、このシーンの撮影をする為に神と二人で歩いていましたら、ゆーだぃ君に遭遇しました。亡き父と母です🤱(二垢)

うぉ〜!拉致りたかったぁ!めちゃ良い写真が撮れたろうなぁ!

それにしても奥(知らない)の人の頭が気になりますねw

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