【猫探し】エピローグ🐈‍⬛ピノ魔界探偵社より - ソルジーのティア＆エオルゼア冒険奇譚

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〜数日後〜
ランディスの家から押収された本物の『猫』は、無事ハリソン邸へ戻される事となった。
一度ゼクレス軍部警察の手に渡った絵画だったが、ピノが依頼の請負人であると言う事と、エルガーの軍への口利きで、ハリソン邸に絵画を返還する役割は彼ら二人がする事になった。
ハリソン邸を二人が訪れた時、コゼットは遊びに出ていて居なかった。

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絵画を返しピノが今回の事件の真相を告げると、ハリソンは大いに驚き謝礼を差し出したが、二人は諸経費以上のものを受け取らなかった。
部屋には黒ネコがゴロゴロしていたが、ソファに座るエルガーの姿を見かけると足元に擦り寄って来た。
「猫は絵の中に戻りましたね。コゼットには何と言ったら良いか・・」
黒ネコと絵画を見比べながら、ハリソンは少し困ったように眉根を寄せた。
「では私が、今からこの猫を元の持ち主に返して来ますよ」
この事件の捜索中に飼い主がわかったのだと言いながら、エルガーがヒョイと片手で黒ネコを抱き上げ、そのまま立ち上がったので、続いてピノも傍らのインバネスを手に取った。
ハリソンはエルガーの腕の中の黒ネコに「元気でな」と声をかけた。
『ニャァ〜』
黒ネコは金の瞳でハリソンを一瞬見つめると、小さな欠伸を一つしてそっぽを向いた。
　　　　　　　　　　
二人とすれ違うように、コゼットが帰宅する。
「コゼット、ご覧、絵が元通りになったよ」
父親に部屋に呼ばれて、見慣れた『夜と猫』を前にコゼットは喜び、同時にいつも一緒だった黒ネコがもう絵の中で動かない事を少し悲しんだ。
「パパ、私が大きくなったら、この絵を私に頂戴！一生の宝物にするわ！」

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　　　　　　　　　🐈‍⬛　
ハリソン邸を出てピノと一旦別れたエルガーが向かったのは、高台の上級貴族街。あの婦人の住むお屋敷だ。
親切に「黒ネコを返して来ます」などと言って出て来たが、なんて事はない。
もしかしたらあの時の美味いコーヒーが飲めるかな…と思っただけである。
「まぁ、まぁ！なんて事でしょう！貴方が探し出してくださったの？」
婦人は黒ネコを受け取ると、エルガーを屋敷に招き入れた。
「本当に丁度良かったわ。またジャイラ密林産コーヒーを仕入れた所だったんですのよ」

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コーヒーをご馳走になり、エルガーが帰ろうとすると、婦人はネコを探してくれた礼だと言ってズッシリとした手応えの袋をくれた。
（え、良いのか？これ)
『ニァ〜』
有り難くそれを受け取ると、名残を惜しむ婦人と黒ネコに見送られ、エルガーは屋敷を出た。

　　　　　　　　　🐈‍⬛

一方、本物の『夜』はランディスの家から押収され、正式に王立美術館所蔵となった。
『夜』と題名の付いていた絵画は、『夜と猫(二枚一対の片方)』と題名が差し替えられた。
今まで騙されていたとはいえ、美術館側の手落ちは隠しきれない。美術館はこの不名誉を挽回する為に事実を逆手に取り、近々「コントレート展」を大々的に開催し、ハリソン邸から期間限定で『猫』を借り受ける予定だ。
二つの絵画が並べられ、本物が見られる数少ない機会が訪れる。
絵を大事にして来たハリソン家の歴史も紐解かれ、脚光を浴びる日も遠くない。
　　　　　　　　　🐈‍⬛

〜さらに数日後〜
ピノ探偵事務所では、腕組みをして壁を眺める二人の男がいた。
満面の笑みを浮かべているピノ。
呆気に取られているエルガー。
「なぁ、ピノ。三つ程質問がある」
ピノはエルガーと肩を並べてニヤニヤしたまま返事をした。
「もちろん、いいとも！エル」
エルガーは、腕組みをした右手だけ解き、壁を指差す。
「何でコレが、探偵社の壁に飾ってあるんだ？」
二人の目の前には『夜と猫』が飾られていた。闇夜に猫が浮かび上がる『猫』と、月の輝く『夜』がきちんと隣に並べられ、完璧な『夜と猫』がここに完成していた。
ピノは嬉しそうに答える。声ははしゃいでいて、先日推理を述べていた時とは別人のようだ。
「証拠物件として押収されていた贋作を譲り受けたんだよ！あ、もちろんあの老人にはちゃんと話を通したよ？彼は笑って快諾してくれたよ」
エルガーは、ランディスが連行される直前にピノが彼と何か話していた事を思い出し、指差した手を額に当てて俯いた。
「ハリソンさんから事件の依頼内容を聞いた時から、異常にやる気があるようにみえたが、まさか初めからこうなるとわかってた訳じゃないよな？」
エルガーの言葉に、ピノはニヤけていた顔を引っ込める。
「ま、まさか、そんな事ある訳ないだろ？」
そう言いながら、この頭の良い相棒が机や棚に未だに乱雑に置かれている絵画集をチラリと見た事をエルガーは見逃さなかった。
ピノはその話題を避けるように話の続きを促した。
「で、三つ目の質問は？」
エルガーはピノの顔をじっと見て、最後の質問をする。
「ここに飾ってある絵画、まさか贋作じゃなくて本物って事はないよな？」
ピノは呆れた表情でエルガーを見た。
濃いローズ色の髪の毛が微かに揺れて、思慮深い瞳が瞬く。
いつもより低い声でピノは、エルガーのジョークに問う。
「君は、一体僕の事を何だと思っているんだい？」
エルガーはその問いを聞くと、ふっと笑ってピノの視線を外し『夜と猫』を見て答えた。